2025-07-10
JOIN THE SEA ISLAND CLUB!【海島綿Webマガジン第4号】
今年も折り返し地点を過ぎ、このWebマガジンも早くも第4号となりました。
お客様の26SSに向けた企画も本格化してきており、来春には新たな売り場で海島綿の製品を目にしていただく機会も増えるのではないかと楽しみにしております。
さて、今月も皆様が海島綿製品の魅力をお客様にお伝えされるのに役立つような、そしてまだ海島綿未経験の方もこの素材を使ってみたくなるような情報をお届けしてまいります。
今月のトピックス
✅1種類なのに「混綿」とはこれいかに?
皆様は「単一混綿」という言葉を目にしたことはありますか?
単一であり、混ざってもいるとは何とも自家撞着的で不思議な単語ですね。私はいまだにこの単語を聞くとムズムズするのですが、この言葉は海島綿糸の大きな特徴を表す言葉であります。
これは私が業界の諸先輩方からお聞きした綿紡績の話になりますが、かつて隆盛を誇った日本の紡績業界が持っていた強みの一つに「均質」な糸を生産するということがあったそうです。同じ糸製品なのに発注するたびに品質が上下していると使う側からすると不都合ですよね。

化学繊維とは違って綿糸の原料は天然繊維で、その品質は産地はもちろんのこと同じ土地でも毎年の作柄によって少なからぬ変動を伴います。このような原料を使用して一定の品質の糸を紡績するために磨かれてきたのが「混綿」の技術なのだそうです。
紡績の流れの一番最初に「混打綿」という工程があります。この工程では圧縮された原綿を開放し、混ぜ、ごみを取り除くという作業がなされます。この「混ぜ」という作業が、最終的に紡績糸としてあがってくる製品の均一性に大きな影響を与えるというのです。(なおここでいう均一性というのは糸の絶対的な均整度の高さではなく、去年作った糸も今年作った糸も同じ品質という相対的な均一性です。)
この混打綿から最後に糸が巻き取られるまでの間にある工程の多さを考えると、この糸の品質を一定に保つために原料の様々な原綿を「調合する技術」というものは確かに職人技というべきに感じます。何度聞いても本当にそんなことができるのだろうかと思うことです。
一方で海島綿を紡績する時も、当然ですが混打綿の工程は存在します。ただ、一般的な綿糸を生産する際の混打綿のうち「混ぜ」るところが海島綿の場合は意味合いが違います。
なぜなら海島綿の糸には海島綿の原綿しか使われていないからです。(弊社が販売している)海島綿の糸には、すべての番手で海島綿の原綿が100%使用されています。確かに海島綿糸の生産工程にも混打綿の工程はありますが、海島綿糸の相対的な品質コントロールは主に別の工程でなされています。

なにはともあれ、原料として1種類の原綿を使用する。これが単一混綿です。調べたところ、今では単一混綿をうたう差別化糸はいくつか存在するようですが、海島綿はその先駆けだったはずです。
では単一混綿であることが海島綿糸の良さに現れるのはどのような所においてでしょうか?
お客様の意見によると、(細番手の良さは当たり前として)意外にも太番手に他の糸との違いが如実に表れるそうです。
一般的には糸が細いほど原料の原綿の品質が重要になってきますが、逆に言えば太い糸を作るのにはそこまで高品質な原綿を使う必要がないということになります。海島綿糸は商品名が示すように番手にかかわらず海島綿だけを原料にしているため、極端に言えば細番手に使用できる品質の原綿を使用して太番手も引いているのです。(オーバースペックとは言いたくありませんが。。。)

確かに、お客様が作られた10番や18番手の海島綿生地を目にすると、ふくらみ感と光沢感を併せ持つ、ちょっと他にはない「気持ちいい」生地になっています。
ぜひとも次の企画には太番手も取り入れていただき、違いを実感していただければ嬉しいです。
✅ 海島綿豆知識 #3
糸の番手
弊社では、海島綿の糸を10番手から140番手まで細かくご用意しています。
この番手、特に綿糸についての数字であることを明示するために「綿番手」とも呼ばれますが、定義がなかなか覚えられないので、私の復習もかねて掲示しましょう。
「1ポンドの重さが840ヤードの長さになる糸を1番手という」
私はステーキが大好きなので1ポンドがどれくらいの重さかはイメージしやすいですがゴルフはやらないのでヤードに関してはさっぱり見当がつきません。ゴルフもやれば晴れてこの定義を覚えられるかもしれません。
ともかく、同じ1ポンドで2倍の1,680ヤードの長さになったら2番手というように、糸が細くなるにつれて綿番手の数字は大きくなります。
ちなみに、ウールや麻も基準となる重さは違いますが同じような原理(恒重式という)で番手が設定されます。毛番手の場合は1㎏の重さで1㎞の長さになる糸を1番手というように単位もなじみがあって覚えやすいですね。
おまけ:綿糸に関して私も役に立たない公式を作ってみました。
糸の長さ(m)=1.7 x 糸の重量(g) x 糸の綿番手
例えば、カリブ産の海島綿の140番手1巻き(945グラム)の糸の長さは何メートルでしょう?
糸の長さ=1.7 x 945 x 140 = 224,910m = 225km !!!
あとがき
この稿を書いているのは7月4日で、本日は当社の創立記念日です。
設立は1975年ですので満50歳という節目の日でもあります。
これまで海島綿を愛してきてくださった皆様への感謝を申し上げるとともに、これからも「お客様へ綿のすばらしさを伝達し感動を与える」という理念のもと、この歴史ある素材を次代へと繋いでいくために動いてまいります。
これからも海島綿をよろしくお願いいたします!
(ITO)