シーアイランドクラブ

2023.03.21

ジャマイカの農家さんとの交流

このたび、私たちが取り扱う西印度諸島海島綿(ウェストインディアン・シーアイランドコットン)の契約農家であるホラスさんを日本へお招きし、原糸の生産現場の方々も交えて品質向上を目的とする会合を開きました。

思えば10年近く前、海島綿供給の安定化のために私たちがジャマイカにおける海島綿栽培を再開しようと同国を訪れた際に、現地協力NPOが声をかけて首都キングストンに集めてくれた農家さんたちの一人がホラスさんでした。つまり、現行の海島綿プロジェクトの初期から関わってくれている重要な生産パートナーです。

昨年7月に私たちがジャマイカを訪れた際には、彼は折からのインフレーションに苦しみ、私たちとシリアスな交渉となることもありましたが、今後の中長期的な協力の継続を見据え、糸づくりの観点から私たちが望むコットンの品質についても話し合うことができ、大変有意義な訪日となりました。

夫妻2人で月曜日の早朝羽田着の便に乗ってくる予定だったのですが、前日の日曜日、すでに日本行きの飛行機に乗っているはずのホラスさんから電話があり、「もしや飛行機乗り遅れたか」と思いながら出ると、「もう着いちゃった」とか云うもので私は大パニック。しかし私も私用で遠方にいたもので迎えにも行けず、仕方ないのでタクシーで自力でホテルまで行ってもらうこととしました。成田着だったら少々面倒だったかもしれません。

後で聞いてみると、予定の便がダブルブッキングで乗れないことが分かったため、急遽早い便に振り替えたそうです。彼らの息子さんが米国の航空会社で働いていて、すこぶる低価格でチケットが手に入るらしいのですが、いかんせん一般のお客さんに対し優先順位が低く、こういうこともあるとか。そういえば、アメリカン・シーアイランドコットンの種子開発に関わる米大の先生の息子さんもデルタの技術者で、同じように格安で訪日したことがあります。よし、うちの子供も将来は。。。と思ったけどちょっと厳しそうです。

月曜は時差に慣れてもらうために簡単な東京観光と弊社代表とのランチテーブルをはさんでの商談をし、いよいよ火曜日、車で長野県の近藤紡績所様の大町工場へと向かいました。

東京の高層ビルのあいだを縫うようにくねくねと走る首都高にも驚いていましたが、自らを「カントリーボーイ」と呼ぶホラスさんが嬉しそうだったのは、山のあいだからチラチラと見える富士山や、雪をいただくアルプスの山々を目にしたときでした。ジャマイカで一番高い山はコーヒーで有名なブルーマウンテンで、標高2,256メートルもあるらしいのですが、さすがに熱帯で雪は降りません。と思ったら過去一度だけ積雪があったそうです。。。

途中おそばを食べて予定より遅く到着した大町工場では、職員の方々が手ぐすね引いて待っておりました。会議室でお互いを紹介し終わった後、一通りの紡績の流れを座学でご説明いただき、いよいよ実際にホラスさんのコットンが紡績されている様子を見せていただきます。

ジャマイカから名古屋の倉庫を経て大町へ届いたコットンは、まずベール(俵)ごとに繊維レベルの品質チェックがなされ、生産する糸の細さに合わせて並び替えられ、順次紡績ラインに投入されていきます。最初の大事なポイントは、コットンに含まれる不純物を取り除くところで、特にホラスさんに注意いただきたいところでもありますので、実際に除去されたゴミを見てもらい、できる限りベールにはコットンのファイバーだけを入れてほしいことをお願いしました。

化学繊維と違い、人の手で収穫され、同じく人の手でベールの形に梱包される天然繊維ですから100%取り除くことはチャレンジングなことですが、栽培だけでなく収穫と輸出準備の丁寧さに至るまで糸の品質に大きな影響を及ぼすことを分かってもらうのは重要です。これまでも除去されたものの写真を送り注意喚起をしてきましたが、実際に現場を見てコットンを取り扱う人たちの話を聞いてもらうことでその切実さを理解いただけたと思います。

その後も短い繊維を取り除き、繊維の方向をそろえ、ロープ状にしたものを何度も合わせては引き延ばして均一化して滑らかな糸を作っていく工程を見終わったホラスさん。ここに来るまで、彼は紡績の工程はもっと単純なものと考えていたそうです。しかし、自分の育てたコットンがこんなにも多くの、それも注意の行き届いた工程を経て糸となっていく様子を目の当たりにして驚きと感動を受けたそうです。

見学の後、再び意見交換。工場の方から過去に納入したコットンの品質データをホラスさんに渡し、その時々の栽培条件と突き合わせてより理想的な品質を追求してもらうことも決まり、2時間ほどと急ぎ足だった工場訪問を終えました。

今回は海島綿糸の品質向上につながる取り決めができただけでなく、これまで現地NPOを通じてのやり取りも多かったホラスさんと直接ゆっくりとお話することにより、私たちが大事にする『生産者の顔が見える関係』がより強固になったと感じます。今回の交流が、近い将来に更にグレードアップした糸を安定的に供給できることに繋がると確信しています。

Inquery

お問い合わせ

お問い合わせについてはsic@kaitoumen.co.jp宛へのメールか、
以下フォームよりお気軽にご連絡ください。
各種質問も受け付けしておりますのでお気軽にどうぞ。