2022.11.25
エルパソ再訪
この秋はアメリカン・シーアイランドコットンの故郷、エルパソに行ってまいりました。7月のジャマイカと同様、こちらも実に3年ぶりの再訪です。
ジャマイカ視察の際には空港が大混乱で、今から思うとよく予定通り事が運んだなという状態でしたが、今回のロサンゼルス(LA)経由エルパソ行程は出発便が1時間ほど遅れただけで、LAでの乗り継ぎもスムーズで滞りなく進んでいきました。コロナモードからゆっくりと抜け出している感じですが、それでも旅行者は少なく、羽田、ロスの空港内は多くのお店が閉まったままでちょっと寂しい雰囲気です。ちなみに羽田からLAまで、行きは9時間(帰りは11時間強)、LAからエルパソは2時間。丸一日かかるジャマイカに比べるとエルパソはたいそう近く感じます。
今回のエルパソのお宿は市の中心街にあるホテル「Paso del Norte(北方の通り道)」というところです。アメリカの南端にあるのに北方とはこれ如何に?ですが、メキシコから見た謂いですね。いつも泊まるのは空港脇のさびれたモーテルですが、シーアイランドのファンの方に現地の魅力をお伝えすべく、社長自ら選んだ宿です。というわけで、今回はエルパソの様子もご紹介したいと思います。
とはいえ今シーズンはアメリカの綿花の作柄が全般的に良くないと聞いていたため、シーアイランドの様子も気になるところ。あくまでも畑の様子を確認することが今回の視察の第一の目的でした。
11月上旬の訪問はちょうど収穫のタイミングでした。周囲はピマ種やアプランド種の畑もありましたが、例年の一面コットンボールで真っ白の光景とは違い、茶系の色合いが目立っていました。棉木の上部20%程についたボールがはじけ切っていないせいです。高まる不安の中、リスク分散のために何か所かに分かれたシーアイランドの畑へ向かいます。
畑では農家さんとスタッフの方々が収穫機の準備をしておりました。収穫されたシードコットンを包むカバーを機械にセットしています。新品だと日本円にして1億円(!)もする機械とのこと、それでも数百エーカーという広大な畑を手で収穫することと比べると長期的にはリーズナブルなのだそうです。
その脇で収穫されるのを待つシーアイランドの畑を見ると、心なしか周辺のピマに比べコットンのはじけ具合が良く、上部の茶色部分も薄いような気がします。話を聞くと、さすがに豊作とは言えないけれども、お願いした量はきちんと確保していただけそうです。言葉の端々にシーアイランドを大事にしてくれていることが感じられ、実際にそれが畑の様子に現れていました。収穫後の綿繰り作業から日本への出荷も今年度はスムーズにいきそうで、まずはひと安心です。
さて今回の出張で一番印象に残っているのは、アメリカの物価高と円安の影響です。
羽田からLAに着くなり、社長が「たぬきうどん食べたい」と無茶なことを言うのですが、我々がいるのはアメリカの国内線ターミナルの隅っこでそんなものは望むべくもないので、スタンドでパンとコーラを買いました。ドル建てで10ドル弱を何の気なしに支払いましたが、マフィンをかじりながら円に換算し「これが1,400円???」と驚愕。しかしこれはまだまだ序の口でした。
エルパソのホテルに入るころには夕食時になっており、疲れた我々はホテル内のレストランで食事をすることになりました。メニューを見てみると1品25ドルは下らないものばかり。そしてご存じのとおりアメリカにはチップがあるので、実際の支払いは更にアップ。
かくして、サイズは大きいとはいえケサディージャ(チーズを挟んだだけのトウモロコシ粉の薄焼きパン)が4,000円となるわけです。私は開き直ってステーキサンドイッチを頼んでしまいました。出張中、ことあるごとに日本円に換算するというメンタリティになっておりましたが、インフレ、そして為替の減価というものをリアルに感じられて、しかもそれがあまりにも強烈で、もはや笑うしかありません。あらためて思い返すと今は虚しくなってきます。
翌朝、5,000円の朝食バイキング(卵とハッシュドポテトと自棄を起こしてクリームチーズを塗りたくったベーグル)をいただく前にホテル周辺を散策しました。ホテルの前にはメキシコ革命の英雄パンチョ・ビジャとアメリカのパーシング将軍が握手をする銅像が立っており、私の意識は一瞬にして20世紀初頭へと持っていかれます。この握手から数年後、二人は敵同士となり、アメリカの町を襲撃したビジャをパーシング将軍が追い回すこととなります。
ホテルはエルパソの中央広場のすぐそばにあり、ホテルの前の通りをまっすぐ20分も歩けばメキシコとの国境にたどり着く位置です。国境の南はフアレス市で、かつてはメキシコどころか世界で最も危険な都市の一つでしたが、ここ10年余り治安は回復してきて、外資もどんどん乗り込んで発展しているようです。エルパソ自体は町中に氾濫するスペイン語が示すように人口の80%がヒスパニックとのことですが、こちらは意外なことに、もともと全米の中でも治安が良い都市だそうです。
都市の原型が作られたのは1820年代ということですが、中心部すなわちホテル周辺にあるモダンな建物は20世紀前半に建てられたようです。時期的にクリスマスのデコレーションが始まるタイミングで、あちこちで電飾を準備する作業員の姿が見られました。
街並みは小ぎれいで、美術館や博物館、劇場などがあちらこちらにあり文化的にも洗練されている雰囲気でありました。気になったのは人通りがやたら少ない印象です。ビジネス街ですので夜は皆さん郊外のおうちに帰ってしまうのでしょうが、昼間もあまり人通りが多い街ではないですね。ただ、町の南半分、メキシコ国境に近いほうはもっと泥臭い町並みで、まんまメキシコという感じで何だか懐かしい環境でした。
物価の高さに驚かされてばかりでしたが、これはアメリカのどこも同じでしょう。エルパソの町自体はコンパクトで洒落ていて好きになりました。次の出張の際にはお休みも組み合わせて、今回は外観を見るだけだった美術館や郊外にあるスペイン植民地時代の古い教会、そしてできることなら国境の南にも足を延ばしてみたいと思います。社長は「次はグランド・キャニオンも見てみよう」などと言っておりますが、場所全然違いますから。。。
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