2021.03.18
シーアイランドコットンが「特別」な訳 第3話
~畑から見える安心感~
シーアイランドコットンが「特別」なワケ。最終回となる今回はシーアイランドコットンの生産、消費の見える化がもたらすお客様の「安心」について、「トレーサビリティ」と「サステナブル」という二つのキーワードを通じてご説明します。
弊社の糸をお使いいただいているお客様とお話していると、シーアイランドコットンという素材の特異性に改めて気づかされることが多々あります。当事者の目からは当たり前のことが、お客様の目からするとものすごく特別で、これまでお話したような品質とは別にこの素材の糸をチョイスされる理由の一つとなっていることです。
その一つが「トレーサビリティ(追跡可能性)」です。
シーアイランドコットンしか取り扱うことがないものですから、私はこのお仕事に出会った当初、ワタと言えば農家さんから買うのが当たり前のものだと思っていました。しかし、業界内のことを知るにつれ、どうもそうではないらしいと分かってきました。綿花市場というものがあり、ワタを取り扱う専門商社さんもいらっしゃいます。弊社のように自らワタの手配から手掛ける糸商は逆に珍しいということです。
つまり、シーアイランドコットンは畑から糸までは弊社が直接取り扱い、その間の紡績もパートナーである近藤紡績所さんだけにお任せをしているため、100%履歴を追うことができます。また農家さんへ栽培委託をしており、出来上がったシーアイランドコットンをすべて引き取っているため、シーアイランドコットンがワタの状態で市場に出回ることがありません。このことがお客様にとって出所がはっきりしているという安心感を与えることになっています。
それだけではありません。糸から先についても、シーアイランドコットンは素材ブランドとして商標が設定されており、消費者の方々がお店で買われるシーアイランドコットン製品には原則としてこの商標入りのタグが付けられています。当然、製品にこのタグが付いているということは、きちんとシーアイランドコットンの糸を使っていただいていることが確認されていることを意味します。
ここに、「畑から店頭まで」のトレーサビリティが整うこととなります。
もともとはこの仕組み自体は製品にシーアイランドコットンが使用されていることを証明するために生み出されたものでしたが、時代が進むにつれ、消費者の方々のあいだに自分が消費するものがその生産過程でどのような履歴をたどってきたのかを知りたいという「新たな欲求」が芽生えてきました。
その過程でだれかを傷つけたり、環境を汚したりするものは使いたくない。そのような欲求に図らずもシーアイランドコットンは合致していました。これが品質とは別の観点でシーアイランドコットンの特別さとなり、畑から見える安心感を与えるこの素材が注目される理由となっています。
時代が進むと同時に消費者の方々に重要視されるようになってきたキーワードとして、すっかり馴染み深くなった「サステナブル」についても、もう一度戻ってみましょう。これは、生産過程や各段階で関わる人が見えるという「トレーサビリティ」にも関連します。
これまでも何度か指摘させていただきましたが、「サステナブル」というとどうしても環境面ばかりにフォーカスが当たってしまいますね。環境が大事ということを否定する人はいません。
しかし、持続可能性というサステナブルという言葉の本来の意味を考えたとき、生産に関わる人、家族、社会にネガティブな影響を与えず活動を続けていけるときはじめて、その活動は持続していける、つまり「サステナブル」であるといえるのではないでしょうか。畑でシーアイランドコットンを栽培する人から、この素材でできた製品を使用される方々まで、関わる全ての人たちが無理を感じない、そのような素材であり続けたいと私たちは考えます。そしてそれは、実際に生産の各段階の人とコミュニケーションできるというようにトレーサビリティが確立されているからこそ自信をもって言えることでもあります。
もちろん、アメリカン・シーアイランドコットンがベターコットン基準に則って栽培されていることにも見られるように、環境への影響においても決して後れを取っているわけではありません。
話はコットン一般になりますが、皆さんはエコロジカル・フットプリント(足跡)という言葉をご存じでしょうか。難しい定義は置いておいて、人間が生きていくにあたり「環境に残した足跡」ともいうべき概念です。
ストックホルム環境研究所というSDGsや環境問題を専門とする非営利のシンクタンクがあります。この機関が実施した研究の一つに、コットンを含む複数の衣料用繊維の生産におけるエコロジカル・フットプリントに関する報告があります。
実は、コットンのエコロジカル・フットプリントは小さくはありません。理由は単純で、栽培するのに広い土地が必要だからという身もふたもないものであります。逆にポリエステルなどは、原料を栽培する必要がないため、エコロジカル・フットプリントは小さめです。「なんだコットン駄目じゃん!」という声が聞こえてきそうですが、報告をもう少し読んでみると、違った側面が見えてきます。
例えば、同じ重量の糸を生産するのに要するエネルギー量の比較を見ますと、ポリエステルはコットンに比べて4倍ものエネルギーを使います。糸の生産といっても紡績だけでなく、原料の生産から含めたすべての使用エネルギーです。二酸化炭素の排出も、エネルギーほどの差ではないにせよ、コットンの排出はより少ないものです。ちなみに糸から先の織りや編みといった加工では、素材ごとの大きな違いは発生しません。あくまで重要なのは、糸になるまでです。
Cotton USAが公開している別の報告によりますが、コットンの栽培は近年大きな改善がみられており、過去35年間で土地利用効率は31%向上し、水の使用量も82%削減されてきたそうです。コットンの負の側面として、水資源の過剰使用が今なお言われますが、現実はすでに大きく変化しています。(なお、カリブにおいてはもともと降雨による水で栽培されております。)
その他にも、コットンはより多くの人々に仕事を生み出すという利点もあります。シーアイランドコットンに関してはこの点はジャマイカにおける栽培事業において顕著ということは過去にもご紹介させていただきましたね。
よく「木を見て森を見ず」と言いますが、それとは逆に個々の側面を見たときに、天然繊維であるコットンの優位性がより際立ってきます。
シーアイランドコットン製品を身に着け使用される方たちが「気持ちいい!」と感じていただけるその理由は、シーアイランドコットンの繊維自体が生まれ持つ特徴に由来したものでした。天然だからこそ気持ちよさが持続する、つまりお気に入りの品を長く使っていただけます。そしていよいよ使えなくなった製品は、天然繊維であるがゆえの生分解性により最終的には土に還ります。
現時点での私たちのトレーサビリティはシーアイランドコットンが製品になるまでですが、消費者の方々がその製品を手にされた後についても何か繋がりを見いだせないか、というのが今後の課題です。
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