第1章 世界一の綿で世界一の糸を紡ぐ 第2話

第2話
~シーアイランドコットンの魅力を最大限引き出すPart I~
シーアイランドコットンで世界一の糸を紡ぐために近藤紡績所では、「海島綿プロジェクト」を発足し、シーアイランドコットンの素材を最大限に活かすための特別管理を設けて糸に紡いでいます。
世界一の綿で世界一の糸を紡ぐ~シーアイランドコットンの魅力を最大限引き出す~では、2話に渡ってシーアイランドコットンを最大限に活かす秘密についてご紹介させて頂きます。
まずシーアイランドコットンは紡績をする前に、入荷したコットンのクオリティ検査を行います。シーアイランドコットンの他にも大町工場では様々なコットンを扱っており、一般の原綿は入荷数量の10%程度のみクオリティ確認の品質試験を行いますが、シーアイランドコットンについては全ベールの品質試験を行います。

天然繊維なので、天候によって品質にブレが出てくることもあります。基準に満たないものは糸に紡がない。また番手によって適正なものを引き分けする等、糸にする工程を通る前のクオリティ検査をしっかりと行った上で品質にブレがない様、細心の注意を払って紡績工程に進みます。
シーアイランドコットンは超長綿の中でも世界最高峰の繊維長を誇るコットンで、シーアイランドコットンを最大限に活かすには 「長い繊維を糸に紡ぐ」 ここが大きなポイントになります。長い繊維だけを糸にするには、落綿率の設定や紡出設定がとても重要になります。
日本酒で例えると大吟醸酒の様な、選りすぐりの繊維だけが糸になるので、光沢感があり柔らかな均一性のある綺麗な糸が出来上がります。

※一般的に超長綿と呼ばれる最も長い繊維は34.9㎜以上になります。
写真は短い繊維から長い繊維を順に並べたものです。
シーアイランドコットンの1番長い繊維は最長54㎜を誇ります。短い繊維もあるので、いかに長い繊維で紡績をするかが、腕の見せ所になります。
原綿の検査をした後は、シーアイランドコットンの開俵をします。シーラインドコットンはカリブ産とアメリカン産の産地の異なるシーアイランドコットンが2種類あります。海を越えた遠い国から日本に運び込まれるため、搬送し易い様、きつく圧縮梱包された状態で工場に入荷します。
一般の原綿に比べ、シーアイランドコットンについては温湿度の管理された環境下で、特別管理されじっくりと何日もの時間をかけて圧縮状態を自然解放(シーズニング)させます。これにより、含有水分と密度の調整が行われ、1本1本の繊維がふっくらとなり、紡績工程で負荷をかけない為、糸にするまでの工程をスムーズに通過でき、質の良い綺麗な糸が出来上がります。

原綿をシーズニングした後は、混打綿工程に移ります。
混打綿工程は紡績工程の入り口であり、原綿についている葉カスやゴミ等を取り除き、次工程へ搬送します。コットンは天然繊維なので、どうしても葉カスや天然ゴミ、鳥の羽等が混入してしまいます。通常の原綿も葉カスやゴミを取り除く工程がありますが、シーアイランドコットンは特別に感度を上げた最新のゴミ除去装置を整備しており、これにより、原綿の中に含まれる異物除去を徹底的に行うことが可能です。
またシーアイランドコットン専用の混綿ラインを使用しますので、シーアイランドコットンに合った最適な除塵と開繊を
いつも同じ条件で品質にブレがなく作業を行うことが出来ます。(異物:天然のゴミ 鳥の羽や大きな葉や茎 人工物 グラウンドカバーのビニールなど)

混綿でクリーニングされ、調湿された原料はシーアイランドコットン専用ラインのカード機へ空気搬送されます。専用ラインのカード機は、繊維の長いシーアイランドコットンに適したカーディングワイヤーと呼ばれる通常のカード機に比べ、細かく鋭い針を装備し、長い繊維の シーアイランドコットンを痛めることなく、最適な状態でスライバーを形成できるようにされており、ここでも長い繊維を紡ぐ管理が施されています。
また、打込みロットごとにカード機の短繊維除去率を常に確認し、必要であれば調整を行い、都度同じ品質で紡出できるよう管理しています。
短繊維を除去し、繊維の長いものだけを選別するのがコーマ工程です。そこでは超長綿向けに調整された専用ラインを使用し、短繊維除去率がより高いコーマ機で短い繊維を取り除きます。
短繊維を除去する割合についても、一般のコーマ糸に比べ短繊維の除去する割合を上げて、シーアイランドコットン仕様に設定し長い繊維だけを選別していきます。


※左の写真がシーアイランドコットン、右の写真が一般のコットン
長い繊維で作られたスライバーは写真の通り、光沢感があり艶ややかで柔らかいです。
上記の様な特別管理を施すことで、限りなく長い繊維だけを残します。特別管理を行うことで、手間やコストは掛かってしまいますが、上質で艶のあるスライバーが出来上がります。
次回は糸になるまでのシーアイランドコットンの特別管理をご紹介させて頂きます。