第1章 世界一の綿で世界一の糸を紡ぐ

第1話
~シーアイランドコットンにかける想い~
(この章の全4話は弊社が提携する株式会社近藤紡績所様よりご寄稿いただいております)
私達、株式会社近藤紡績所は大正6年の設立後、約100年間にわたり国内外で紡績事業を行っております。
弊社で唯一の国内工場となった大町工場ではシーアイランドコットンを糸に紡いでいます。1983年に操業を始めてから、主に定番ニット糸を中心に糸の生産を行ってきましたが、2015年、最終製品を見据えた特殊糸生産拡大の為、長野県の旧堀金工場と大町工場を一本化し、特定顧客向け特殊糸の受注生産を本格化し技術力を高めていきました。
大町工場は綿紡績に特化した工場となっており、北アルプスの伏流水からなる年間13℃の豊富な地下水を工場内の冷却に使用することで省力化とコストダウンを図り、糸を作る為に出る屑物や落ち綿を再利用し、地域との交流を図る等サステナブルな取り組みも進めています。


※写真 (上)株式会社近藤紡績所 大町工場、(下)広大な北アルプスからの伏流水


※写真 (上)地域の園児との綿摘み体験、(下)先進的な感性評価
また繊維事業を幅広く展開していくにあたり、消費者ニーズと技術シーズをマッチさせることが重要だと考え、大学と連携した産学共同研究を基盤に技術開発を進め、先進的な「ものづくり」と感性的価値の付与を実現しています。
技術力と合わせて感性評価等、原糸から製品までの科学的価値を高めていく一方で、2015年よりシーアイランドクラブ株式会社との協業を開始し、世界で唯一のAmerican Sea Island Cottonの紡績工場となりました。のちにこの協業はメンバーシップ制である West Indian Sea Island Cottonの紡績も含むこととなり、今ではカリブ産、アメリカ産両方のシーアイランドコットン紡績を任されております。
世界最高品質の稀少な海島綿を扱うに先立ち近藤紡績所では 『 海島綿プロジェクト 』 を発足しました。
海島綿プロジェクトは原綿から糸になるまで、全ての段階で順に進行していきました。
①糸を紡ぐ際の取り扱い機台管理方法等の基準を確立し、極細番手試験を実施


※写真 Sea Island Cottonの紡績の様子
②デリケートな海島綿を取り扱う為に、混綿から捲糸、品質試験に至るまで細かな特別管理を設定
③ 古い機械を上手に扱いながら、必要な工程には最新鋭の紡績機械を導入することが必要不可欠だと判断し、最新鋭の粗紡機と精紡機を導入
これら最新鋭の紡機を導入することで、粗紡工程では張力の調整が安定し、均一な粗糸に巻き取ることができ、精紡工程では糸が細くなるほど発生し易い毛羽やムラが減少し、綺麗で均一な糸が紡出できます。
近藤紡と言えば、定番糸というイメージが強い会社でシーアイランドコットンの紡績は遥か遠くの世界に感じていました。
特殊糸から始まり、紡績技術を磨き続け、我武者羅にもがいてきた結果、遂にはシーアイランドコットンの紡績をする夢が叶いました。
シーアイランドコットンを紡績するからには世界一の糸を作る。
その為に海島綿プロジェクトを立ち上げると共に、新紡機の導入という大きな決断を下しました。
世界に誇る良いものを世に発信したい。
近藤紡績所は世界一の品質の超長綿で世界一の糸を提供する、その一心でものづくりに励み、『 海島綿という稀少な綿を守り続ける責任 』 があると感じています。
超長綿のルーツでもある稀少な海島綿を断絶させてはいけない。私たちが守っていかなければいけない。
喜びと責任を背負い、近藤紡績所は海島綿の紡績に誇りを持っています。

※写真 最新鋭紡績機
第1章の紡績編については、本編を含み、4編の構成を予定しております。
次回は海島綿プロジェクトについて更に掘り下げた内容をお届けします。